せいちゃんのブログ

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確定申告|株の利益・配当にかかった高い税金を取戻す賢い申告の仕方(後編)

総合課税方式の選択に当たっての留意点」をご紹介した前編に続き、今回は、「分離課税方式の選択に当たっての留意点」についてご紹介します。

 

 

目  次

 

 ・Ⅱ.分離課税方式の選択に当たっての留意点(後編)

   1.分離課税方式の税計算の流れ

   2.損や繰越控除が大きいほど税軽減(還付)効果が大きい!

   3.目的別に数字を使った「還付金額」算出のシミレーション

    1)目的①「一部特定口座で損がある為口座間で損益通算して益を圧縮したい」

    2)目的②「今年度譲渡益と過去繰越損と相殺して益を圧縮したい」

    3)目的➂「損が残ったので、繰越して次年度以降の税軽減に生かしたい」

・最後に

   

Ⅱ.「分離課税方式」の選択に当たっての留意点

分離課税方式は、配当控除には一切触れず、又、給与や年金その他の所得とは関わりなく、株式等の譲渡所得や配当に限定し、売買で生じた損失を活用して「損益通算や繰越控除」等により税軽減を図ることができる仕組みです。

 

従って、損益通算で利益を圧縮した節税メリットが、総額課税方式の配当控除メリットよりも大きい場合に選択します。  

 

1.「分離課税方式」の税計算の流れ

証券会社等が発行する「特定口座年間取引報告書」をもとに申告します。

 

 「特定口座年間取引報告書」には、「譲渡所得」、「譲渡損失」、「配当所得」、「源泉徴収税額」等が記載されています。

 

複数の証券会社等で「特定口座」を持ち「源泉徴収」を選択していれば、それぞれの口座で同様に源泉徴収が完了しています。

 

従って、分離課税方式では、それぞれの口座(1つだけであればより簡単)に記載の譲渡所得(損失所得)と配当額を使って目的に合わせて計算すれば還付金が試算できます。

 

分離課税方式では、当然ですが、譲渡所得や譲渡損失、配当所得の大きさによって還付金の大きさが変わりますので、損が出たから分離課税が有利だとは一概に言えません。

 

あくまでも両方式を試算した上で、かつ、住民税などへの影響も踏まえて判断されることをことをおすすめします。  

 

2.損や繰越控除が大きいほど税軽減(還付)効果が大きい!

分離課税方式では、一つの口座で損が大きく出た場合や、過去の繰越控除(損の繰越)額が大きいほど、利益と相殺できる額が大きくなる為、申告メリットが大きくなります。

 

損が大きすぎて相殺できる利益が足りなければ、損は翌年以降に繰越ができ、翌年以降の利益を相殺できる権利が留保できることになります。

 

従って、損が大きければ大きいほど、分離課税選択のメリットは大きくなります。

 

但し、受け取り配当額が大きく配当控除のメリットが大きければ、e-Taxを使って比較してみることが賢明だと思います。  

 

3.目的別に数字を使った「還付金額」算出のシミレーション

数字の大きさにより税軽減効果がどう変わるか、総合課税方式と比較できるように表にしました。

 

簡単にいうと、損益通算や相殺によって得られる税軽減額は、「損×15.315%」となります。(もちろん損失額以上に益(含む配当)があることが必要です)

 

なお、総合課税方式との比較は、前述した年金者モデル(年金収入が310万円、配当収入が90万円)の「所得税の還付金20万円」との対比でみます。

 

1)目的①「一部の特定口座で損が出たので口座間で損益通算して益を圧縮し税を軽減したい」

複数の「源泉徴収ありの特定口座」を持っていて、一部口座で損(配当を含めても)が出ているため、適当な口座間で「損益通算」し益を減らし税還付を受けるのが目的です。

 

あくまでも損に見合う口座を選んでその口座の益を減らせば良いのです。

(すべての口座を 取り上げる必要はありませんので、ご注意を!)  

 

 

[シミレーション]

 

◯2つ証券会社(A社、B社)で特定口座を持っていて、それぞれの口座の年間取引結果が下記の3ケースを想定。⇒損失の大きさを変えて比較

 

ー次の二つのケースで試算しますー

 

ケース 口座名 損益と配当収入及び支払った所得税合計額
A口座 利益200万円と配当45万円で益合計245万円、源泉徴収38万円
B口座 損失100万円と配当45万円で損合計 55万円、源泉徴収税 0
A口座 利益400万円と配当45万円で益合計445万円、源泉徴収68万円
B口座 損失300万円と配当45万円で損合計255万円、源泉徴収は 0円

 

ーそれぞれの試算結果ー

<ケースⅠの場合>

A口座では、所得合計が245万円(200+45)で所得税38万円が源泉徴収されている。

B口座では、損合計が-55万円(-100+45)で所得税0で納めていない。

この二つの口座を合計して損益通算すると、A口座とB口座を合わせた所得合計は190万円(245-55)であり、これに株取引所得税15.32%を乗じると29万円となる。

従って、実際に負担すべき所得税が29万円でいいにもかかわらず既に38万円を納付しているので、9万円(38-29)が軽減され還付されることになります。

 

  <ケースⅡ 場合>

 

A口座では、所得合計が445万円(400+45)で所得税68万円が源泉徴収されている。

B口座では、損合計が-255万円(-300+45)で所得税0で納めていない。

この二つの口座を合計して損益通算すると、A口座とB口座を合わせた所得合計は190万円(245-55)であり、これに株取引所得税15.32%を乗じると29万円となります。

従って、実際に負担すべき所得税29万円でいいにもかかわらず既に68万円を納付しているので、39万円(68-29)が軽減され還付されることになります。

 

以上の様に、損失額が大きいほど分離課税方式の税軽減効果は大きくなります。

 

ここでは、損失を超える利益(含む配当)がある場合を想定しましたが、利益が足りなければ損は翌年以降に繰り越せます。(「繰越控除」)

 

ーこれらを、表にしたものが下表ですー

 

この表では、住民税でも同様な計算で還付金が受けられることを表しています。

 

ケース別税額計算過程表と還付額(単位 万円)

 

ース 口座 株式等の所得 所得税 住民税 合計
譲渡所得 配当所得 所得合計 所得税 所得税 源泉徴収 還付金 住民税 住民税額 源泉徴収 還付金 源泉徴収 還付金
A 200 45 245 15.32% 38 38   5.00% 12 12      
B -100 45 -55 15.32% -8 0   5.00% -3 0      
通算 100 90 190 15.32% 29 38 8 5.00% 10 12 3 50 11
        損益通算で8万円還付 3万円還付 計11万円
A 200 45 245 15.32% 38 38   5.00% 12 12      
B -200 45 -155 15.32% -24 0   5.00% -8 0      
通算 0 90 90 15.32% 14 38 24 5.00% 5 12 8 50 31
        損益通算で24万円還付 8万円還付 計31万円
A 400 45 445 15.32% 68 68   5.00% 22 22      
B -300 45 -255 15.32% -39 0   5.00% -13 0      
通算 100 90 190 15.32% 29 68 39 5.00% 10 22 13 90 52
        損益通算で39万円還付 13万円還付 計52万円

 

分析から言えること

 

 ①前述の総合課税方式でシミュレーションした年金者モデルは、配当合計が90万円で還付金を試算したところ、所得税が20万円還付されることになりました。

 

このモデル者のケース(配当90万円)を分離課税方式で申告した場合、この配当控除による効果20万円を上回る効果が得られるのは、譲渡損が200万円以上あるⅡとⅢのケースとなります。

 

簡単に言うと、損失を上回る利益(含む配当)があれば、「損×15.315%」が節税額(還付金)になりますので、20万円以上の節税メリットを得るには、20万円÷15.315%=140万円の損失があればいいことになります。

 

 

 ②上表でわかるように、確定申告を分離課税方式で申告し、そのままにしておくと、株に掛けられた住民税5%分の還付も受けられるので、「総合課税で確定申告し住民税で不要申告する場合」に比べて還付金は多くなります。

 

しかし、次年度の住民税の算定基礎に、損益通算後の株式所得(譲渡損益+配当)が含まれるので、益が大きく残ると住民税の負担が大きくなる可能性があるので注意が必要です。

 

くれぐれも、口座間で損益通算する場合は、益が大きく残らないよう益の小さい口座との損益通算に限定して申告しましょう。

 

結局は、住民税については、還付金の大きさと住民税等への負担増の大きさ等の比較から判断しなければならないところがあり、住民税への影響が大きければ、住民税の還付を断念して、不要申告の手続きをとることも必要です。

(住民税での還付金の大きさと、翌年の住民税負担の大きさを比較する必要があります)  

 

 

2)目的②「今年度の譲渡益と過去の繰越損と相殺して益を圧縮して税を軽減したい」

過去に損が出て確定申告で繰越控除(3年間を限度として損を繰り越せる制度)の申告をしている場合に、本年度に利益(含む配当)が出たので、繰越控除と相殺して、本年度の利益に対して源泉徴収された所得税等の還付を受けるのが目的です。

 

あくまでも繰越損に見合う口座を選んでその口座の益を減らせば良いのです。(すべての口座を取り上げる必要はありませんので、ご注意を!)  

 

 [シミレーション]

 

◯本年度は利益と配当を合わせ大きく収益がでた。

また過去3年間において損失があったので繰越控除分がある。

このため、繰越控除を使って本年の収益を圧縮して、支払った税金の還付を受けたい。

このため、今年の収益と繰越控除額の大きさを変えたケースを2つシミュレーションしました。

 

 <ケースⅠの場合>

 

本年度収益は、利益400万円と配当90万円の合計が490万円となり所得税75万円が源泉徴収されている。

 

繰越控除には有効分(3年以内)110万円があるので、これと損益通算すると、本年の収益は、380万円(490-110)に圧縮でき、これに本来の所得税率15.32%を乗じると納めるべき税金は、58万円でいいことになる。

 

従って、既に源泉徴収された75万円から17万円(75-58)が税軽減分として還付されることになります。

 

<ケースⅡの場合>

 

本年度収益は、利益400万円と配当90万円の合計が490万円となり所得税75万円が源泉徴収されている。

越控除には有効分(3年以内)310万円があるので、これと損益通算すると、本年の収益は、180万円(490-310)に圧縮でき、これに本来の所得税率15.32%を乗じると納めるべき税金は、28万円でいいことになる。

 従って、既に源泉徴収された75万円から47万円(75-28)が税軽減分として還付されることになります。

 

分析から言えること

 

 ①前述の総合課税方式でシミュレーションした年金者モデルは、配当合計が90万円で還付金を試算したところ、所得税が20万円還付されることになりました。

 

このモデル者のケース(配当90万円)を分離課税方式で申告した場合、この配当控除による効果20万円を上回る効果が得られるのは、譲渡損が200万円以上あるⅡのケースとなります。

 

簡単に言うと、繰越損を上回る利益(含む配当)があれば、「損×15.315%」が節税額(還付金)になりますので、20万円以上の節税メリットを得るには、20万円÷15.315%=140万円の損失があればいいことになります。

 

 

②上表でわかるように、確定申告を分離課税方式で申告し、そのままにしておくと、株に掛けられた住民税5%分の還付も受けられるので、「総合課税で確定申告し住民税で不要申告する場合」に比べて還付金は多くなります。

 

しかし、次年度の住民税の算定基礎に、損益通算後の株式所得(譲渡損益+配当)が含まれるので、益が大きく残ると住民税の負担が大きくなる可能性があるので注意が必要です。

 

 くれぐれも、損益通算して益が大きく残る場合は総合課税方式にするか、住民税不要申告制度を活用するか精査が必要です。

 

3)目的➂「繰越控除や損益通算しても大きな損が残ったので、損を繰越して次年度以降の税軽減に生かしたい」

シミレーションは省略します。  

 

最後に

「総合課税方式」と「分離課税方式」のどちらが税軽減に有利であるかは、およその見当はつきますが、住民税や住民税をもとに決定される国民健康保険料や介護保険料、児童手当に反映されて負担増も考慮して、微妙な場合はそれぞれを試算の上で判断することが重要です。

 

このような時は、「e-tax」が重宝なツールとなります。(確定申告|1月はe-Taxで還付申告の準備をしよう!  

 

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